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嫉妬の代償



 女の部屋の電話が鳴った。

 女はシャワーを浴びていた。女は電話の相手が誰だか知っていた。
 電話の音がしつこく鳴り続けるが、女は出ようとしない。冷たい体に熱いシャワーが心地よい。
 女はシャボンを手に取り、丁寧に自分の体を洗う。・・・。

 鳴り続ける電話の音に男の苛立ちが感じられた。


 




 







 (フフッ、いい気味・・・)

 女は微かに笑みを浮かべる。
 冷たくあしらい、突き放し、興味の無い振りをすればする程、ある種の男はその女に執着心を抱く。
 女はこれまでの経験からそのことをよく知っていた。

 一か月程前、会社同士の親睦会で知り合った男。
 その男は過剰なまでの自信家だった。
 まるでもう既におれの女だと言わんばかりに迫り、ホテルのロビーで女の唇を強引に奪った。
 嫌な気はしなかった。男の強引さは割りと好きだった。
 しかし、女のプライドもあった。
 「ばかにしないでよ!」
 女は男の頬を思い切り引っ叩いた。叩かれた男は悪びれもせず薄笑いさえ浮かべていた。

 「電話する。待っててくれ」


 





 セックスは嫌いではない。これまで何人もの男性と性的関係を持った。
 男たちは彼女の美貌と男心を刺激してやまないエロティックなフェロモン。
 そして、彼女のフェラチオに誰もが夢中になり、いつしか虜になった。今でも過去の男から未練がましい連絡が来る。

 まだ電話の音が続いている・・・。


 「さっきからずっと電話鳴ってるけど大丈夫?」

 女の若い恋人が裸姿でバスルームに入ってきた。

 「いいのよ。放っておけば」


 





 女は、若い恋人の既に勃起しているペニスを手の平で弄ぶ・・・。
 両の睾丸を優しい手つきで愛撫した。若いペニスがそれだけでピクンピクンと跳ねる。
 女は恋人に軽くキスをしながら、ペニスの根本から先端までをゆっくりと指先だけでなぞる。
 恋人が、たまらずに、「うっ、うっ!」と、快楽の呻き声を上げる。女はペニスの裏側、腹の部分を優しく撫でさする。
 今にも射精しそうに震えるペニスが愛おしい。
















 女は同時に若くみずみずしい筋肉質な胸部に舌を這わす。乳首に甘い吐息を吹きかけ、おもむろにキスをする。
 官能の吐息を何度も男の胸に吐く。その度、男の上半身が、「うっ、うっ」とビクビクと震える。
 女は若く逞しい胸板を愉しむように頬を寄せ、男の乳首に唇をかぶせ、熱い舌でねっとりと舐める・・・。

 





 女が亀頭を愛撫し始めると、若い男は腰をうごめかせ、「はうっ、うっ、うぅ・・・」と切ないよがり声を上げた。
 「玲子さん、おれ、もうだめだ。逝きそう。くうっっ」
 女は甘い吐息を男の耳にかける。
 「とっても逞しいわ。さとしくんのおちんちん」
 その淫らな囁き声に刺激され、若い男はさらに呻く。

 「うっ、逝きそうっ! このまま出していい? 出ちゃうよ!」

 女がクスリと笑う。

 「いいわ。我慢しないで。いっぱい出していいのよ」

 女がエロティックな吐息と共に耳元で優しく囁く・・・。

 「あ、あっ、もう出る! 出ちゃう!」

 





 男が女の手の中に勢いよく射精した。若い射精は何度も繰り返された。
 射精後のペニスはまだびくびくと痙攣していた。
 女はまるで泣きじゃくる子供をあやすようにペニスをシャボンできれいに洗い、軽いキスをした。

 「私、先に出てるわね。待ってるわ」

 女は言い、バスルームを出た。


 いつの間にか、電話の音がやんでいた・・・。


 





 女が化粧をし直す。若い恋人の好みの化粧だ。
 若い男は女に、恋人を感じさせる化粧を求めた。
 そういう愛情に溢れたセックスが若い恋人は好きだった。
 そのためなるべく薄めで少しだけ生活感を感じさせるような化粧を施す。
 香水もその子とのセックスにおいてはあえてつけなかった。

 男がバスルームから裸のまま出てきた。
 既に再び勃起していた。
 若い彼氏は女の後ろから甘えるように抱きついた。まるでベッドへと急かすように・・・。


 





 ・・・。

 ベッドの上、女は男の上に乗り、ゆっくりとした動きで若いペニスの感触を楽しんでいた。
 時に男に覆いかぶさり、抱き締め合い、甘く蕩けるようなキスを交わし、耳元でエロティックな言葉を囁きかける。
 男は興奮でものも言えない。
 若い男は彼女の下で、今にも射精しそうな快楽を我慢しながら、女とのセックスに溺れ、彼女の持つフェロモンに眩暈すら感じていた。
 この世で最も幸せな時を過ごしている実感を心から感じていた。

 「玲子さん、大好きだ」

 ふいに男が上半身を起こして女に抱き着き、愛の言葉を囁く。
 若い純粋な言葉が女の耳に微笑ましく、また心地よかった。
 女は優しい笑みを浮かべて、「私もよ。さとしくん」と答えた・・・。

 ふと女は思った・・・。


 











あの男、今頃どうしてるのかしら・・・。









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